INTERVIEW

地域の人と宝を忘れない

岩手県 北海道・東北ブロック

下苧坪 之典

Yukinori Shitautsubo

地域を見直す、地域を作っていく。

原料調達と卸売の会社、株式会社 ひろの屋と北三陸の地域食材を徹底的に活かした加工食品の製造・販売、うにの養殖などを行う戦略子会社、株式会社 北三陸ファクトリー(ひろの屋100%子会社)を運営しています。もともと父や祖父、曾祖父が水産に従事していました。父も水産に従事しましたが、一度事業を終了。8年前、新たに社名を引き継ぎ、ひろの屋を立ち上げました。
ビジネスのヒントは、私の住んでいる地域・三陸海岸の特徴にあります。三陸海岸は良質の海藻が取れ、特にワカメでは日本一の収穫量を誇っています。しかし、この地域は波が高くワカメの養殖ができない。自然に天然のものを提供することになります。天然のワカメは味がよく美味しいと評判。この論理を再考しながら、私の会社でも地域ならではの特産をあれこれ探りながら、足元からしっかりブランディングしていくことに重きを置きました。
ワカメの次は、タコやアイナメ、ヒラメなど地元の鮮魚に着目し、最初は生産者と信頼関係を築けず大変でした。それでも海に繋がっていけたのは、一歩一歩信用を構築していった成果。新規参入としては16年ぶりに入札権を取ることができ、ビジネスチャンスを広げることができました。今、力を入れているのは『うに牧場』。目の前にあるものを何でも食べ尽くすウニの習性を生かし、三陸の美味しいワカメと昆布で育ったウニを、東京の料亭で生きた状態で食していただけるシステムが稼働中です。

ビジネスモデルをノウハウとして構築する。

商工会そのものは50年前に作られた組織です。今と昔と時代は変わっていますが、未だに昔ながらのやり方を踏襲しているところもあれば、新しいものに挑戦する地域もあります。私は後者の方で、新しいことにチャレンジして地域社会にインパクトを与えていく。それが商工会青年部での仕事だと思っています。
例えば今後、ウニをお客様に一年中食べていただけるような環境づくりをするために、洋野町でウニの養殖をスタートしていくのですが、そのビジネスモデルを、同じような課題を抱えている、例えば長崎、山口、南三陸町、海外であればオーストラリアやニュージーランドなど、磯焼けが問題になっている地域で試したい。そのノウハウが確立できれば、別の地域でも可能性が広がると思いますね。そのため商工会青年部でも、問題をしっかり解決できる組織を作っていきながら、新しい価値に繋げたいです。

地域のことは地域の人間の手で行う。

地域の商工会は、地域資源を活用できることが一番の強み。それはどこでも同じです。岩手の取り組みが、一つのロールモデルになればいいなと思っています。地域のことは、地域にしかわかりません。大手の企業が参入してできることでもなく、デリケートな仕事なので地域の人が手を取り合ってやっていくことだと考えています。
また、地域だけの事業ではなく、逆に地域から都心や世界を目指していきたい。私がここにいる役割は、まさにそれですね。世界に発信できる食材の環境づくりを行いたいです。食材の「材」は財宝の「財」。命の吹き込み方は地域にいる人間がやらなければいけない。それがそのまま東京などに伝わっていくので。そのブランドをのせて、東京の方にもそのブランドを肌で感じながら食べていただきたい。結果として食材の価値が漁師さんの収入として返ってきます。バックグラウンドをしっかり我々が把握して、消費者へ伝えていくことにこだわりたいと思います。

事業所情報

商工会名
岩手 洋野町商工会

企業名
(株)ひろの屋

青年部員名
下荢坪 之典

代表者名
下荢坪 之典

企業業種
水産物加工業

設立年
2010年5月18日

従業員数
30名