INTERVIEW
良いものをもっと見て知る
山口県 中国・四国ブロック
木原 利昌
Toshimasa Kihara
大学卒業後1年半、アメリカに留学をしていました。何をよりどころにして過ごせば良いんだろうと思っていた時に、自分は技術者でもないし、漠然と会社経営だな、と思い至りました。兄が社長をしていた実家の家業があり、必然的に私が専務に。
家業の「木原製作所」は、創業116年。各種食品乾燥機、家庭用乾燥機などの各種乾燥機を主軸として事業展開する製造メーカーです。明治35年に会社ができた時は海水を煮て塩をつくる製塩釜を作るところから始まり、昭和3年に製塩業が縮小した後は、国策で塩とタバコへ転換。タバコの機械を近代化しようという動きがあり、そこからタバコの乾燥機へ。それから90年、こういったご時世なので縮小化するタバコ業界は仕方ないとしてもその技術を食品に転用するなど、技術的な柱は残しつつ、横展開して市場を作っていこうとしているところです。
また、小型の乾燥機を海外へ輸出していこうとしていて、ロシアの展開事業に力を入れています。事業所は13ヵ所あり、社員は70人。茨城、新潟、青森にも事業所があります。
私は、県の役員は一回もやらず、昨年山口ブロックの商工会青年部の会長になりました。47都道府県で取り組みの違い、部員数の違いはありますが、一番の問題は商工会青年部に入って何になるのかということ。商工会青年部の価値を上げていくことと、商売人の集まりなんだからお金を稼がなければいけない。それも地域にとってプラスになるやり方で。その事例を作ってみんなに見せることが山口県にとって大切なんだろうと思います。
この地は、山口市の旧秋穂町。車エビ発祥の町で養殖業を世界で初めて成功させた町です。今年の8月に世界エビ狩り選手権が開催され、それに出ようと思ったらなんと40倍の倍率。出たいという人がそれだけ集まる大会だからこそ、商工会青年部で何か持って帰れるものがないかな、ということで、車エビを使ったレトルトカレーを開発しました。エビの風味を出すために干しえびを形がなくなるまで煮込んでいます。乾燥食品というとドライフルーツをイメージしますが、干しえびも乾物。エビのPRを上手くできないかと思い、私も干しエビの事例を作りたくて、商工会青年部とエビ業者と一緒に開発しました。商標登録もでき、けっこうな売れ行きでした。
商工会青年部に入ってから分かったことですが、山口県には課題がたくさんあります。何をやってるか分からない。何もやってないのではないか。横の繋がりもありません。私は仕事に活かせないと意味がないと思っていて、自分の商売とのリンクと地域に対する利益誘導は絶対に共通ポイントがあると思っています。
県青連の職員に、全国の研修に行きたいと直接連絡し、次世代地域リーダー塾が4年前からはじまるという時に行ってきました。地域振興事例の成功例を知ったことで、開発のきっかけになりいろいろな知り合いも広がっていきました。せっかく商工会青年部という受け皿があるのですから、実績を残したいと思います。
2016年山口県で首脳会談があったとき、県としてさまざまな視点から友好協定が結ばれたのですが、うちの会社にもロシアに一緒に行きませんかと声をかけていただき、そこからロシア向けの輸出に本腰を入れています。ロシア側が関心を示しているのは機械の性能はもちろん、山口市役所乾物部の取り組みの基本的考え方にメリットを感じているようです。作るだけじゃなく、農業者の向上とブランディング力。もっとできることがないかな、と思っているところです。